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 日本商業教育学会 会長
田中 圭
(千葉商科大学 准教授)

会長就任にあたって

 日本商業教育学会の会員の皆様、そして商業教育に携わるすべての皆様、このたび日本商業教育学会の会長を拝命いたしました 田中 圭 と申します。
 本学会は、初代会長の雲英道夫先生から、河合昭三先生、山田不二雄先生、清水希益先生、岡田修二先生、中澤興起先生、永井克昇先生、西村修一先生へと歴代の会長が引き継いでこられました。日本の商業教育の発展に寄与してきた本学会の歴史と、歴代会長や会員の皆様が築き上げてこられた功績に対し、心より敬意を表します。
 このような伝統ある学会の会長という重責を胸に刻み、商業教育のさらなる発展のため、全身全霊を尽くす所存です。

商業教育の「今」と未来

 現在、高校における商業教育は大きな転換期を迎えています。社会や産業構造の激変、少子化、生徒のニーズの多様化など、これまで経験したことのない課題に直面していることは、皆様も日々実感されていることでしょう。
 本学会は、これらの課題に正面から向き合い、未来の社会を担う人材を育成するため、新たな商業教育の在り方を皆様とともに探求していきます。

喫緊の課題への取組

 現在、商業教育が直面する課題は多岐にわたります。最も大きな課題の一つは、生徒数の減少です。少子化に加え、大学進学率の上昇も相まって、商業高校への志願者が減少し、教育の基盤が揺らいでいます。
 この一因は、商業教育の魅力が十分に伝わっていないことです。商業高校で身に付く学びは、就職のためだけのものではありません。データ分析、マーケティング、金融などの専門知識やスキルは、大学進学、さらには起業といった多様な選択肢につながるものです。この点を社会にもっと強く発信していく必要があります。
 また、AIやDXの普及、グローバル化といった時代の流れも、商業教育の変革を迫っています。簿記や情報処理といった伝統的な科目に加え、データサイエンス、プログラミング、デジタルマーケティングなどの新しい知識やスキルをいかにカリキュラムに取り入れるかが喫緊の課題です。
 しかし、新しい分野に対応するには、教員の専門性向上が不可欠です。教員の中には、ビジネス現場での経験が豊富でない方もいます。変化の速いビジネスの世界に対応した実践的で最新の教育を提供するためには、教員が産業界と密接に連携し、自身のスキルを継続的にアップデートできる仕組みを構築することが重要です。
 さらに、生徒の多様なニーズへの対応も大きな課題です。就職希望者から大学進学希望者まで、一人ひとりの進路に応じたきめ細かな指導が求められます。経済的に厳しい家庭の生徒に対する教育的支援も忘れてはなりません。
 そして、教育内容そのものも、単に知識を教え込むだけでなく、生徒が自ら課題を発見し、解決する「探究的な学習」へ転換する必要があります。教科横断的な学習や、地域社会との連携を深めることで、実践的な問題解決能力を養うことが不可欠です。

「学びの共同体」としての学会

 商業教育は、変化の激しい現代社会で活躍できる人材を育成する上で、重要な役割を担っています。私たちは、ビジネスの知識やスキルだけでなく、不確実な未来を生き抜くための思考力、判断力、問題解決能力を育む教育を目指さなければなりません。
 本学会は、会員の皆様がそれぞれの現場で抱える課題を共有し、互いに知恵を出し合う「学びの共同体」として機能していきます。皆様一人ひとりのご意見、ご協力が、商業教育の未来を拓く力となります。

 商業教育の発展という同じ志を持つ仲間として、共に力を合わせ、未来の商業教育を創造していきたいと考えています。皆様のご支援、ご協力を心よりお願い申し上げます。

令和7年8月25日
日本商業教育学会 会長 田中 圭

 

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